唯が、目を大きく見開いた。
彼女がここまでわかりやすく表情を変えるのを、初めて見た気がする。
[player] あっ……
一筋の光が、唯の頬を伝っていく。
唯が慌てて目尻を拭ったのを見て、ようやくそれが涙なのだと気付いた。
[player] ご、ごめ……
[八木唯] 宇宙の素粒子の総量は、永遠に変わらない。
[player] え……?
唯はこちらに背を向けて、慎重に語り始めた。
その声が少し震えているように思えるのは、錯覚ではないのかもしれない。
[八木唯] 物理学の基礎的な考え方。先輩は知ってた?
[player] 聞いたことなら……あるかも。
唯のご両親が科学者だったことを、そして唯が二人を愛していたことを思い出す。
物理学にはまるで縁がない自分でも、//n彼女が今、何か大切なことを伝えようとしているのはわかった。
[八木唯] 物質が燃えて灰になっても、また別の物質を形作る素粒子になって、//n世界のどこかを漂う。物理法則でそう決まってる。
[八木唯] だから、お父さんとお母さんも、世界から消えてしまったわけじゃない。
[八木唯] 二人の素粒子は、新鮮な風に形を変えて、今も世界のどこかを漂ってる。
[八木唯] ………
[八木唯] …もしかしたら、
[八木唯] 私と先輩を引き合わせてくれたのは……//n素粒子になって風に運ばれてきた、二人だったのかもしれない。
[player] もしそうだとしたら、本当に素敵な話だ。
[八木唯] ……飛躍しすぎ?
[player] ううん、そんなことないよ。
また一つ、唯の頬を水滴が伝っていく。
何も言わずに隣に並んだ。
泣き顔を覗き込むなんて無粋な真似はしたくない。
ただ隣に立って、同じ景色を見つめていたかった。
誰かが遺した素粒子が漂う、この美しい世界の一瞬を。
[八木唯] ……先輩。
[player] どうした?
[八木唯] ううん。夕陽、綺麗だね。
[player] ……そうだね。
どちらからともなく、歩き始める。
行き先はもう決まっていた。//n唯が買ってくれた食材たちが、今も冷蔵庫の中で待ち侘びているのだ。
[八木唯] ……これからもよろしくね、先輩。
今まで見たことがないくらいはっきりと、唯は穏やかな笑みを浮かべている。
どこかで見守ってくれている素粒子たちを安心させられるくらい、//nこの笑顔を大切に守っていきたいと思った。
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